doncamania Presents by モジュラーシンセ・日本

「doncamania」(ドンカマニア)は、主に1960年代から1980年代はじめにかけて生産された「アナログ音源のプリセット型電子リズムマシン」の魅力にせまるプロジェクトです。当方ではこうした機器を「ラグジュアリ・リズムマシン」(Luxury Rhythm Machine)と呼ぶことを提唱します。

 

プロジェクトを通じて、往年の機器のサウンドをアーカイブ、現代のテクノロジーとの融合による新たな音楽の創造、さらに、この麗しき文化と製品ジャンルの再生を目指します。

「シンセ以前」から存在するラグジュアリ・リズムマシン

ラグジュアリ・リズムマシンの歴史は意外に古く、1959年にはエレクトリック・ピアノでお馴染みのWurlitzer社が「Sideman」という真空管式の機種を発売しています。Sidemanは内蔵の円盤にリズムパターンとなる突起が付いており、機械的に回転しながらスイッチをトリガーして各パーカッションを鳴らすという仕様でした。

日本でも、現在のKORGの前身である京王技研工業株式会社(京王技研)が1963年に「DONCA MATIC」というシリーズを発表しました。大卒初任給が1万数千円の時代に定価28万円と非常に高価なマシンでしたが、酒場での伴奏用やスタジオに幅広く導入され、リズムマシンによるテンポ基準クリックを「ドンカマ」と呼ぶほどになりました(当プロジェクトの名称も、DONCA MATICシリーズに敬意を表する形でつけられています)。

ロバート・モーグ博士が現在のシンセサイザーの原型となる最初のモジュラーシステムを作ったのが1964年(テルミンなど他の様々な電子楽器はそれ以前にも存在しました)。それを考慮すると、ラグジュアリ・リズムマシンは「シンセ以前」から存在する古株のデバイスであるのがわかります。

以降、ROLANDの前身であるエース電子などいくつものメーカーから、バラエティ溢れるラインナップが発売されました。1980年前後からはユーザーが独自にパターンを組める機種が中心となり、80年代中期にはサンプリングの技術を使ってリアルなドラム音を出せるマシンが安価になったため、ラグジュアリ・リズムマシンはほぼその姿を消すこととなりました。

ちなみに、この種のマシンを指すのによく使われる「リズムボックス」という名称は元々日本コロムビアの商標であり、現在も権利を継承した株式会社ディーアンドエムホールディングスが保持しています(商標が一般名詞として使われている例としては「ホチキス」に似ています)。

ラグジュアリ・リズムマシンは、もはや過去の遺物なのでしょうか?

いえ、今の時代もなお…むしろ、電子楽器やレコーディングのテクノロジーが大きく発展した今こそ輝きを放つ様々な魅力があるのです!

魅力その1:味わいある質感のサウンド

最大の魅力は何といっても、豊かな厚みを伴ったそのサウンド。同じくアナログ音源のTR-808、TR-909といったリズムマシンのサウンドは、特にダンスミュージックを中心に現在の音楽に欠かせないものとなっていますが、既に1960年代にはこれらにかなり近いニュアンスの音色を持ったマシンが登場しています。

アナログの電子楽器は、人間の可聴域を大幅に超える成分を発している事が多く、それがサウンドに少なからぬ影響を与えています。多くのサンプリングやシミュレーションによる合成では可聴域外がカットされている場合が多く、ぱっと聴きは似ていてもオケの中での存在感などがかなり変わってきます。

アナログリズムマシンは、大方の回路は似ていても、機種ごとに味わい深い音色の個性が表れており、また個体差やコンディションによりバラツキも大きくなっています。それは極めて「楽器的」な性質であり、効く者に大きな心地よさをもたらします。

魅力その2:魅力と個性があふれるデザイン

ラグジュアリ・リズムマシンは、カラオケ登場以前に酒場での伴奏に使われたり、高級な電子オルガンのオプションとして販売される事も多かったので、ウッド調の高級感のあるデザインが数多く採用されています。

現代の電子楽器はその多くがプラスチックや金属で出来たソリッドなデザインのボディを採用していますが、例えばリビングルームなどに置きたいと思った時、マシンと部屋のデザインが「しっくりと合う」例は少ないでしょう。

一方、ウッドパネルやカラフルなボタンを多用したアナログリズムマシンはインテリアとしても成立するようなデザインのものが多く、男性のみならず女性の趣味にもマッチさせながら、生活のなかにリズムマシンを導入することができます。

魅力その3:シンプルゆえの奥深さ

プリセット型の機種は、当然ながら予め準備されたパターンしか演奏できません。これは不便とも受け取れますが、例えばギターを軽くつま弾くのに伴奏が欲しい場合など、きっちりパターンを打ち込むより、TVのチャンネルを選ぶようにリズムをザッピングし、テンポをノブで合わせるというイージーオペレーションの方が快適な事も多いはずです。

往年の機種にはラテン系のリズムの豊富で、テンポの大幅な操作などで解釈を変えることで大変面白い曲調が生まれる場合も少なくありません。また、回路で作られたリズムは決してタイミングが「ジャスト」ではなく、音色とのコンビネーションで他では得られないノリが出てきます。

裏技的な使い方として「ボタンの複数押し」というのがあります。多くの機種では、例えば「SAMBA」「ROCK」など複数のパターンのボタンを同時押しすることで、両者が複雑にからみあった不思議なリズムパターンを作ることができます。これとテンポの組み合わせだけでも、莫大なバリエーションが存在すると言えるでしょう。

懐古ではなく再生へ!

doncamaniaでは、ラグジュアリ・リズムマシンの魅力の紹介や音源なおのリリースを中心に展開しますが、これは決して「懐古趣味」ではなく「活用して新たな楽曲を生み出す」ことを主眼としたものです。

さらに、リスナー・読者の皆さんの声を集め、是非こうしたラグジュアリ・リズムマシンが「新製品」としてどこかから発売される状況を一つの目標として設定しております。是非、末永くこの魅惑の世界におつきあい下さい。

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