身震いするほどクールなデザインのマシン、その正体は?
これは、KAWAI(株式会社河合楽器製作所)が1960年代にリリースした「電子スクールリズマー」という、学校教育向けのリズムマシンです。
残念ながら完動品ではないのですが、まずはそのサウンドをお聴きください。かなり「ヤバい」ですよ!
収納時は上蓋を装着。これを準備室から出してくる係には率先してなりたいですね!
上蓋の裏にはパターンの例が。
メタリックな筐体に、KAWAIの旧ロゴが映えます。
大きく作られたBPMダイアル。数値の変化はリニアではなく、多用されるゾーンが広くとられています。
拍子の切り替えスイッチ。パーツは往年の電子オルガン系に多用されたものを使用。
「ひょうし木」をマニュアル操作で鳴らすためのトリガーボタンと、ラッチ式のスタートボタン。
電源スイッチが兼用されたボリュームノブ。
スクールリズマーには5色のピンが付属し、それを本体のマトリクスに挿すことでパターンを作成します。
「ザクッ」と深くピンが挿さる感触はモジュラーシンセのパッチングにも似て、モノを操っている感覚がダイレクトに伝わります。
物理的なマトリクスにカラフルなピンを挿す方式は、後年のリズムマシンで採用されるLEDのオン/オフ表示よりもはるかに見やすく、譜割りの感覚を養うのに効果がありそうです。
本体にはラインやヘッドフォン出力はなく、サウンドは上面に設けられた内蔵スピーカーから発音します。ユニットは2つ付いていますが、ステレオやツイーター&ウーハーになっているわけではなく、同じものがデュアルで装備されている形です。
正式な型番は「SR-5」。シリアルナンバーは13470とのことで、起点が何番か不明ですがある程度のまとまった数製造されたのでしょうか。
こちらは、未使用のまま残っていたアンケートハガキ。
料金別納の表示を見ると、期限が昭和41年(1966年)末。ということは、その数年前から販売されていた商品であると考えられます。ちなみに1966年はビートルズの来日や、初代ウルトラマンの放送があった年。その時代から、こんな国産電子楽器があったんです!
こちらは同じく付属していた「証明書」。冊子のマニュアルのようなものは見当たらず、これが説明書も兼用しているようです。
証明書の中の文言。感動をおぼえるほど誇り高い一文です!
交流の周波数表記が、現在のHzではなく「サイクル」(Cycle/Second)なのが時代を感じさせます。
冒頭の動画を観て頂くとわかりますが、演奏中に拍子切替えを行うとリズムがおかしくなります。現代的な視点からみると、そうした「エラー」を曲に活かしてみたくなりますね(笑)
使わないでくださいと言いながら「動作いたします」と言ってしまうおおらかさ、好きです。
そして、是非皆さんに注目して頂きたいのがココ。
当時のKAWAIとしても、かなりの意気込みを持った製品であったのがうかがえます。ただ、直接後につづく製品ラインナップや記録が見当たらない所を見ると、当時としては「早過ぎる」製品だったのかもしれません。
しかし、製品の誕生から約50年後の現在に生きる電子楽器好きの我々には、このマシンの持つ魅力を深く理解することができます。
そこで、ここに
電子スクールリズマー再生プロジェクト
の開始を宣言したいと思います!
プロジェクトのミッションは下記の3つ
1.当プロジェクト所蔵のスクールリズマーを完動状態に修理する
まずは、是非きちんと動く状態にレストアしたい所です。
2.「本来のユーザー」である児童に無償解放したり、新たな音楽制作に活用する
やはりこのマシンは、是非子供たちに存分に触ってもらってこそ本懐を果たせるのではないでしょうか。そして大きなお友達(笑)にも、新たな音楽を生み出す道具として活用して欲しいです。決して「展示品」にはしないつもりです。
3.このコンセプトを継承する新たなデバイスを生み出す
フィジカルな操作感と共に、音楽や電子楽器の面白さに触れられるこのデバイスのコンセプトは現代においても大変魅力的なものだと思います。是非「21世紀の新製品」として、温故知新的な新しいデバイスをどこかのメーカーさんと共同で開発したいと考えています。
さて、まずは何を置いても1.のレストアですが、修理するにしても「本来どんな音だったか」の資料が全く無いので、ゴール地点を設定できないのが現状です。
そこでこれをご覧の皆様にお願いですが、動作しているスクールリズマーの実機や、録音した音源があるなど情報をお持ちの方は是非ご協力頂けないでしょうか?情報は当サイトの運営元である株式会社スタジオねこやなぎのフォームよりお寄せ下さい。
プロジェクトの進展は、また逐次当サイトにてお知らせします!
(c)2015 Studio Nekoyanagi Co., Ltd.